シンジ 「待ってよ、カヲルくん!焦りすぎだよ!」

カヲル 「シンジくん、焦らさないでおくれよ。僕はもう待てないんだ、早くここに!ここにかけておくれよ。」 


ス゚ッッ パアァァ━━ン!!!


カヲル 「リリス、何をするんだい?いくら僕にはA.T.フィールドがあるとは言え、流石に後ろから不意打ちだと例えスリッパでもちょっと痛いんだよ。」

レイ 「タブリス、碇くんがみんなの氷を掻き終わるまで待って。そもそもあなたたち、食事のたびに画が無いと卑猥にとられかねない発言が多いわ。なんとかならないの?」

シンジ 「あとでカヲルくんの宇治金時にもちゃんと練乳かけるから待っててよ。」 ゴリゴリゴリゴリ

アスカ 「ねぇ、ファースト。アンタほんとにブルーハワイでいいの?この色なんだか食欲そそられないんだけど。」

レイ 「構わない。だいたいかき氷シロップなんて色と香りで差を付けてるけど味自体に違いは無いもの。」 

トウジ 「ほえ?そうなんか?ワシはブルーハワイってなんかガリガリ君ソーダ味に味が似てるなぁって思うてたけどアレはワシが騙されてたんか?」

レイ 「たぶんそのソーダ味の氷菓自体が色と香りでごまかしてるわ。その色にしてもコチニール色素、つまr

シンジ 「綾波っ!そこから先は言っちゃダメだ!コチニールがサボテンにつく虫だなんて言っちゃd…。」 ガリガリガリガリ

レイ 「碇くん。だからと言ってあなたが言ってしまっては意味がないわ。」

シンジ 「」

カヲル 「とは言っても、この場にいる顔ぶれを見る限りではかき氷シロップの原材料なんか些細な問題にしか見えないけどね?」

アスカ 「回りくどいわねー、アンタ性格も性癖もストレートじゃないわよ。」 

カヲル 「誰も気にして居ないって事さ。」 

トウジ 「まぁ、言うて駄菓子やねんから体にええわけが無いくらいはもうハナッから相場が決まっとるわなぁ。いちいち気にしてたら何も食えんようになってまうわ。」 

シンジ  「だけど、綾波。こんな手動のかき氷器なんて年代物どこから持ってきたの?」 

レイ 「加持1尉が赤木博士のところに持ってきたの。赤木博士はこれに動力をつけようとしてたけど、どう考えても成功するとは思えないプランを立てていたから黙ってこのパイロット控室まで持ってきたわ。」 

トウジ 「赤木センセ、いったい何する気ぃやってん?」 

レイ 「技術局2課の遊休装備品保管室で眠っていたV型12気筒レシプロエンジンを搭載しようとしていたわ。」 

アスカ 「バッカじゃないの?」 

トウジ 「エンジンの発熱で氷なんぞ一瞬で水やな。」 

アスカ 「それ以前にこんなチャッチイのにそんなエンジンつけたらかき氷器ごとどっかに吹き飛ぶわよ!」 

シンジ 「ろくな事にはならないよね…。」

アスカ 「そういえば、シンジ。アンタ次の休みちょっとアタシに付き合いなさいよ。」 

シンジ 「あ、ごめん、アスカ。日曜日はちょっと…ダメなんだ…。」 

アスカ 「土曜日でもいいわよ。」 

シンジ 「土曜日もちょっと…。日曜日の準備をしたいから…。」 

アスカ 「なに?アタシに付き合えないくらい大切な用事ってなんなの?言いなさいよ!バカシンジ!」 

シンジ 「…人と会うんだ。…僕の ……大切な人と。」 モジモジ

アスカ 「」 

レイ 「」 

カヲル 「」 

トウジ 「ん?お前らなに固まっとるんや?」 




…………………… 
……………… 
……… 

<金曜日の昼休み・第3新東京市立第壱中学校 2-A教室>



カヲル 「今日集まってもらったのは他でもない。シンジくんの『大切な人』とやらの話をしたいんだ。」 

トウジ 「いや、それはええんやけどなんで3年生のお前がここに居るんや?渚。」 

カヲル 「嫌だな、鈴原くん。作戦会議の為に出向いていきたんじゃないか。で、シンジくんは今日は朝からNERVなんだね?」 

アスカ 「ええ、そうよ?近々遂行予定の洋上作戦とやらについての大事な打ち合わせがあるとかなんとかでミサトと一緒に朝イチでご出勤よ。」 

レイ 「赤木博士も昨日からMAGIをその洋上作戦の打ち合わせに使うって忙しそうにしていた。」 

カヲル 「ということは、今日はシンジくんは急に戻ってくる事は無い。」 ヒソヒソ 

レイ 「そうなるわ。」 ヒソヒソ 

アスカ 「それは同時に、今日の段階でアタシたちに目に見えてわかる動きは無いって事ね。」 ヒソヒソ 

トウジ 「ほな、どないする気やねん。」 

カヲル 「シンジくんは、明日は準備で忙しいって言ってたね。外に出るようなら尾行でもするしかないかな。」 ヒソヒソ 

レイ 「でも、碇くんが必ず外に出るとは限らない。セカンド、碇くんの監視をあなたにお願いしてもいい?」 ヒソヒソ 

アスカ 「そうね、家の中でのシンジの行動を自然に監視する以上はそれはアタシの単独任務よね。」 ヒソヒソ 

トウジ 「あー、尾行とかやったらワシそれはパスしたいんやけど…。」 

レイ 「なぜ?」 

トウジ 「いや、明日な。委員長とこの妹のノゾミちゃんとなワシんとこのサクラをな横濱カレーミュージアムに連れてかなあかんのや。もちろん委員長も一緒やねんけど…。」 

カヲル 「…鈴原くん、横濱カレーミュージアムはもう無いよ。」 

トウジ 「へ?」 

カヲル 「哀しいけど横濱カレーミュージアムはね、2007年に閉鎖してしまったんだ。」 

トウジ 「」 

カヲル 「あ、鈴原くん。カレーにこだわりがあるわけじゃ無くて、お出かけがメインなんだったら新横浜ラーメン博物館でもいいんじゃないかな?かの松本レイジも自著で言ってたよ、ラーメンは人類の永遠の口の友だと。まさにリリンが生んだ食文化の極みじゃないか。」 

トウジ 「そ、そうするわ。…とりあえず委員長に聞いてくる。」 トボトボ 

カヲル 「さて、作戦不参加の鈴原くんは放っておくとして、作戦会議を続けようか。」 ヒソヒソ 

レイ 「でも、作戦と言っても結局は碇くんの行動が一切読めない以上はセカンドの監視だのみしかない。」 ヒソヒソ 

アスカ 「そうね。いつシンジが外出してもすぐに対応出来るように、アンタたち2人にうちのマンション近くで朝イチから待機してもらうくらいしかないわね。」 ヒソヒソ 

レイ 「そうするわ。0500時、葛城邸最寄りのコンビニエンスストアにてフィフスと合流。そのまま待機。」 ヒソヒソ 

アスカ 「……それは流石にシンジも起きてない気がするんだけど、いいわ。そこはアンタたちに任せる。ただアタシからも動きがわかり次第アンタたちにメールするわ。」 ヒソヒソ 




…………………… 
……………… 
……… 

<夕方・NERV職員食堂 厨房内>



シンジ 「田村さん、色々教えてもらえて助かりました。ありがとうございます。」 

田村2尉 「いいんだよ、シンジ君。それにしてもシンジ君、なかなかスジがいいね。卒業してもNERVに残るつもりならどう?主計局に来ないかい?」 

シンジ 「どうでしょうか…。僕も最初は仕方なしに始めた料理ですけど、確かに嫌いじゃないですからそれも良いなって思うんですけど…。作戦局も技術局も手離してくれるかどうか…。」      

田村2尉 「ははは、それもそうか。それ以上にシンジくんのことを手離しそうにない部局もあるだろうしね。なんしても日曜日がんばりなよ?せっかくのデートなんだから。」 

シンジ 「はい!初めてじゃないんですけどやっぱり大切な人に食べてもらう料理なので…。少し緊張しますけど。」 

< シンチャ-ン! ブリ-フィングサイカイスルワヨ-! 

シンジ 「あ、ミサトさんが呼んでる。田村さん、もう行きますね。ありがとうございました。」 




…………………… 
……………… 
………
<NERV本部・作戦局第二分析室>



ミサト 「悪かったわね、シンジ君。2時間も待機させちゃって。」

シンジ「いえ、いいんです。おかげで田村さんのところに色々と教わりに行けたんで。」

ミサト「あら?それはあたしも期待していい話なのかしら~♪」 

シンジ 「とりあえず、日曜日のお弁当に一度作ってみて反応見てからですね。でも、お酒に合いそうなものも教わったのでそのうち食卓に並ぶと思いますよ。」 

リツコ 「お話し中のところ悪いけど、始めていいかしら?」 

ミサト 「あ、リツコ。ごめん!始めちゃってくれる?」 

リツコ 「シンジくん、待たせてごめんなさいね。MAGIの再調整に思いのほか時間がかかってしまって。」 

シンジ 「あ、大丈夫ですよ。でもMAGIの再調整でそこまで時間がかかるってどうしたんですか?」 

リツコ 「それが、今回の対象水域の潮の流れが過去10年のデータに比べて大きく変わってしまっているの。変化の傾向の分析に少し時間がかかってしまって…。」 

ミサト 「それ、ちょっちヤバいんじゃないの?どうなの?リツコ。」 

リツコ 「まだ、なんとも言えないわね。あまりにもデータが少なすぎるのよ。だから、今回はとりあえず仮説をもとにしたシミュレーションを組んでその上で海保と連携して随時不具合に対応していくしかないわね…。」 




…………………… 
……………… 
……… 

<夕食時・葛城邸ダイニング>



アスカ 「………。」 

アスカ 「ねぇ?シンジ。」 

シンジ 「なに?アスカ。」 

アスカ 「…アンタ、あしたアタシに付き合えないくらい忙しいの?」 

シンジ 「うん、ちょっと買うものが思ったより多くなりそうだから朝ごはん食べたらすぐに出かけようと思うんだ。」 

ミサト 「そりゃ、シンジくんの大切な人とのデートだもんね。準備もしっかりしとかないとねぇ♪」 

シンジ 「ごめんね、アスカ。次の休みはちゃんと付き合うから…。」 

アスカ 「…………。ぷいっ!」 



< ピロリン♪ 




【To】ファースト,ナルシスホモ
【Sub】This is PRINCESS.
━━━━━━━━━━━━━━
 ターゲットのPUPPYは明日、
 朝食後から行動開始の模様。
 MOUSEとANGELの両名は 
 0700時までに合流して待機。 
 over. 




…………………… 
……………… 
……… 

<土曜日 am07:30・葛城邸 玄関>



シンジ 「じゃ、ミサトさん。行ってきます。晩ご飯の支度までには戻りますから。」 

ミサト 「はい、行ってらっしゃい。車には気をつけるのよ。」 


プシュ- パタン 


ミサト 「あら?アスカ。どうしたの?」 

アスカ 「アタシもちょっと行ってくるから!」 ドタドタドタドタ 


プシュ- パタン 


ミサト 「あんな変装までしちゃって…。気になるならあたしに訊けばいいのにねぇ。あたしも知ってるような顔してあげてたんだから。」 ニヤニヤ 

アスカ『こちらPRINCESS. PUPPYはいま家を出たわ。over.』 

カヲル『こちらANGEL. エントランスからPUPPYが出てくるのを肉眼で確認したよ。MOUSEとともに作戦行動に入るよ。…ねぇ、セカンド?このコールサインというのは本当に必要なものなのかい?』 

アスカ『こちらPRINCESS. うっさいわねー!日本人はカタチから入るものだってNERVの戦術作戦部作戦局1課の課長も言ってたわよ!over.』 

レイ『ふたりとも待って。いまいかr… PUPPYが南に向かって進行を始めたわ。over.』 

アスカ『こちらPRINCESS. ファースト、あんたも意外とノリがいいのね?…アタシも可及的速やかに合流する!over.』 




…………………… 
……………… 
……… 

<碇シンジ現在地 第3新東京市高速鉄道第二環状線・仙石原駅>



アスカ『こちらPRINCESS. PUPPYは西口の券売機で片道520円区間分の切符を買ったわ。over.』 

レイ『こちらMOUSE. 東口から同額を買ってANGELとともに先行して追跡に入るわ over.』 

アスカ『こちらPRINCESS. 了解したわ。アタシは一本遅れて追いかける。行っとくけどこれは隠密追跡なんだからね!つまらない抜け駆けはナシよ。over.』 

カヲル『こちらANGEL. わかっているよ。いま話をこじらせたら何よりPUPPY本人が悲しむ。そんな誰も得をしない事はしないさ。over.』 

アスカ『こちらPRINCESS.了解。ふたりの健闘を祈るわ。over.』 




…………………… 
……………… 
……… 

<碇シンジ現在地 同線・新吉祥寺駅周辺>



カヲル『ANGELからPRINCESS. PUPPYは新吉祥寺で下車したよ。そのまま北口の大型ショッピングモールに向かっているね。君との中継の都合もあるから今はMOUSEが単独で追跡しているよ。over.』 

アスカ『こちらPRINCESS. いい判断ね。アタシもいくらもしないうちに新吉祥寺に着くわ。MOUSEもPUPPYの動向に変化があれば教えてちょうだい。over.』 

レイ『MOUSEからふたりへ。PUPPYの現在位置はモール併設の大型スーパーの調理器具売場。ル・クルーゼのお鍋を見てとてもウットリしているわ。over.』 

アスカ『こちらPRINCESS. 新吉祥寺に到着したわ。ル・クルーゼはPUPPYの趣味ね。 
その状態になるとアイツしばらくその場から動かないわよ。ANGELと合流次第すぐに追いかけるわ。over.』 




…………………… 
……………… 
……… 

<2時間後・碇シンジ現在地 第3新東京市 仙石原西 某スーパーマーケット>



カヲル『こちらANGEL. 店内精肉売場にてPUPPYを発見したよ。引き続き監視を続行すればいいんだね?over.』 

アスカ『こちらPRINCESS. そうしてくれる?あ゙━━!なんなのよ、バカシンジの奴!あんだけさんざっぱら調理器具売場で粘った挙句買ったのが安物の圧力鍋ひとつってなんなのよ!』 

レイ『MOUSEからPRINCESS. 落ち着いて。そんな大声あげるといくら売り場から離れていてもPUPPYに感づかれる。over.』 

カヲル『ANGELからふたりへ。PUPPYはいま店員と交渉して豚バラ肉ブロックを500g、鶏胸ミンチと鶏レバーを250gずつ調達したようだね。そのままPUPPYは移動を開始したよ。引き続き追跡すればいいね?over.』 

アスカ『こちらPRINCESS. …お願いするわ。over.』




…………………… 
……………… 
……… 

<夕方・同市内 高台公園>



カヲル 「今日1日シンジくんを追跡してみたけど、あまり成果らしい成果はなかった気がするね。」 

アスカ 「そうね、何しろ買ったものといえば安物の圧力鍋と豚バラブロック、鶏挽肉、鶏レバー、長ネギ、タマゴ、チューブのおろし生姜。食材の方は少し奮発してたみたいだけど。」 

カヲル 「そうだね。少なくとも明日のための身支度とか相手への贈り物とか言った類のものでは無さそうだね。」 

レイ 「どちらかと言えばお弁当の材料。」 

アスカ 「そうね。そして少なくともアンタが食べられる物を作る気は無いわね。」 

レイ「………………。」 シュン 

カヲル 「セカンド、今はお互いの心の抉りあいをしている場合ではないよ。シンジくんがそこまで大切にしたいと選んだ人だ。僕たちは祝福をすべきなんじゃないかな?」 

アスカ 「そんな簡単に… 割り切れないわよ………………。」 




…………………… 
……………… 
……… 

<夕食後・葛城邸 キッチン>



ミサト 「あらー?シンジくん、明日のお弁当の仕込み?」 

シンジ 「ええ、今から始めて明日箱詰めする頃には味も染みていい感じになると思うんで。」 

ミサト 「少~し、ツマミ食いしちゃってもいいかしら?」       

シンジ 「少しくらいなら構わないですけど、ちゃんと味がしみてからガッツリ食べてもらう方がいいと思いますよ?」

ミサト 「何よー!シンちゃんの意地悪ー!」

シンジ「意地悪してるわけじゃないですよ…。ところで、アスカどうしたんですか?ずいぶんと不機嫌な感じでしたけど…。」

ミサト 「気になる〜?」ニヤニヤ 

シンジ 「はい。」 

ミサト 「心配ないわよ。明日シンジくんが帰ってくる頃には機嫌直ってるわ。」 ニヤニヤ 

シンジ 「???」 

ミサト 「いいから、いいから。シンジくんは気にせず仕込み始めちゃいなさいな♪」 

シンジ 「はぁ…。」 

ミサト 「で、何から作るのかしら?」 

シンジ 「いちばん時間かかりそうな豚の角煮からやります。」 

ミサト 「あら♪いいわねー。」 

シンジ 「ゆで玉子も入れたいんでまずは卵から。水から茹でて12分、そんなに難しい話じゃないですね。どのみち角煮と炊き合わせる時に固茹でになっちゃうんで最初から固茹でにしときます。」 

シンジ 「玉子が用意出来たら本格的に豚の方に取り掛かります。」 

シンジ 「まずは水200cc.、醤油を100cc.、みりん50cc.に酒100cc.、それから…はちみつを15cc.と砂糖大さじ1杯、それからチューブの生姜大さじ1杯を合わせておいて…。」 

シンジ 「豚バラ肉をひと口大に切り揃えて、いきなり茹でても良いんだけど軽くソテーしてあげてから煮た方が良いらしいんで両面を軽くソテーする…と。」 

シンジ 「両面に焼き目がついたら浸るくらいに水を入れて下茹で開始。10分から20分くらいか…。」 

シンジ 「下茹でが済んだらお湯を切りながらお肉を圧力鍋へ…と。それから5センチに切り揃えた長ネギと合わせておいた調味料も投入。圧力鍋を強火にかけてっと…。」 

シンジ 「圧力がかかったら弱火に落として25分くらい。」 

シンジ 「あとは煮上がってからさっきのゆで玉子の殻を剥いて追加で鍋の中に入れて少し煮詰めたら出来上がりだね。」 


シンジ 「続いては、鶏レバーだね。これもまずは調味料。醤油と酒を30cc.ずつにみりんを15cc.、それから砂糖を大さじで2杯。」 

シンジ 「鶏レバーは何回か水を換えながら流水でよく洗って10分くらい浸けおきしておいたものを強火で1分ほど下茹で…っと。」 

シンジ 「さらに茹であがったレバーをもう一度流水でよく洗って血合いとか余計な脂とかをしっかり落とす。なかなか面倒だよね…。」 

シンジ 「よく洗ったレバーをやっぱりひと口大に切り揃えて、鍋にレバーと合わせた調味料とチューブの生姜を大さじ1杯。少し水を足した方がいいかな?焦げると困るし。」 

シンジ 「鍋を火にかけて、沸騰したらアクをとって中火にして3分くらい。あとはまた箱詰めする時にちょうどいい加減まで煮詰めたらいいや。」 

ミサト 「シンジくん、これなんて料理なの?」 

シンジ 「鶏レバーの甘辛煮ですよ。」 


シンジ 「あとは鶏胸ミンチだね。これも調味料からの方がいいかな?」 

シンジ 「醤油と酒とみりんをそれぞれ15cc.ずつに味噌を大さじ1杯、それから砂糖を小さじ1杯。」 

シンジ 「調味料が準備できたら角煮のあまりの長ネギをみじん切りにして…ネギはたっぷり目で、フライパンに小さじ1杯分の胡麻油を馴染ませてから長ネギを炒めてっと。」 

シンジ 「ネギがしんなりしてきたらチューブの生姜を大さじ1杯と鶏胸ミンチをフライパンに。」 

シンジ 「肉の色合いが変わったら合わせた調味料を入れて汁気がとぶまでさらに炒める。」 

シンジ 「汁気がとんだら容器に移して冷ます…っと。」 

ミサト 「あら、美味しそうな鶏そぼろ。」 

シンジ 「これは冷めたら玉子焼きの芯にしてネギ味噌巻き玉子焼きにします。」 


シンジ 「最後にお弁当だからね。ご飯も欲しいよね。」 

シンジ 「炊飯器にお米を4合と水加減は少し少なめ。」 

ミサト 「あら、水加減は守らなくていいの?」 

シンジ 「おにぎりにするんで少し硬めの方が扱いやすいんですよ。」 

シンジ 「そこに酒を15cc.、味の素を小さじ半分。そして塩を小さじ2杯。」 

ミサト 「塩むすびかしら?」 

シンジ 「はい、田村2尉いわく塩加減が大事だって。」 

ミサト 「もう、あの人の口癖みたいなもんだもんね〜。塩が足りないと戦力に影響するって。」 

シンジ 「そうですね。…あとは、明日出かける前に箱詰めしてお弁当に仕立ててやるだけです。」 

ミサト 「シンジくん、明日きっと喜んでくれるわ。」 

シンジ 「そうだと良いんですけど…。」 




…………………… 
……………… 
……… 

<日曜日 am06:35・葛城邸>



アスカ 「……………。」 ブスッ 

ミサト 「シンジくん、忘れものないわね?」 

シンジ 「はい、お弁当も用意できましたし、動きやすい服装にもしてますし。大丈夫です。」 


ピンポ-ン♪ 


ミサト 「あら、来たのかしら?」 

シンジ 「はーい。」 トタトタトタトタ 

ミサト 「あ、シンジくん!あたしも挨拶に行くわ。ほら、アスカも!」 

アスカ 「なんで、アタシもなのよ………。」 


プシュ- パタン 


ゲンドウ 「おはよう、諸君。」 

ミサト 「おはようございます!碇司令。」 

アスカ 「」 

シンジ 「おはよう、父さん。」 

ゲンドウ 「遅れてすまなかったな、シンジ。葛城3佐、今日はお互い非番だ。そこまで鯱鉾張る必要はない。」 

ミサト 「いえ、しかし…。」 

ゲンドウ 「私に対する態度と言うのなら使徒戦役当時の作戦行動中の君の態度の方が余程荒ぶっていた。今さらだ。」 

ミサト 「その節は大変失礼致しました。」 

ゲンドウ 「構わん。あの頃は誰もが必死だった。君の態度も決死の作戦に真剣に取り組んでいたからこそのものだろう?違うかね?」 

ミサト 「そう仰って頂けるならば報われます。ところで赤木リツコ博士から既に報告があがっていると思いますが、本日のF作業対象水域の潮の流れが過去10年のデータと大きく変化しております。」 

ゲンドウ 「ああ、聞いている。」 

ミサト 「さしあたり、その変化の傾向をあらかじめシミュレーションした上でナビゲーションを構成しましたがデータがあまりに乏しいとの事で、MAGIと海上保安庁ならび気象庁との連携で随時最新のデータをお手元のHANDY- MAGIに送信する形で対応する事になっております。」 

ゲンドウ 「わかった。…シンジ、前回の釣行から半年も空いてしまった。すまなかったな。」 

シンジ 「いいよ、父さんだって戦後処理で忙しいのわかってるから。こうして時間とってくれてるだけでも嬉しいよ。」 

ゲンドウ 「そうか。では、葛城3佐。今日1日シンジを借りていく。」 

ミサト 「はっ!気をつけて行ってらっしゃいませ!」 


プシュ- パタン 


アスカ 「」 

アスカ 「……はっ!ミサト!これ、どういう事よ!シンジは大切な人とデートじゃなかったの?!」 

ミサト 「そうよー。シンちゃんは『大切なお父さんと家族水入らずの海釣りデート』よ?」 

アスカ 「そんな…。じゃあ全部アタシのひとり相撲だったってわけぇ?」 ヘナヘナ 

ミサト 「そーなるかしらねー?しっかし、たかだか海釣りにMAGIまで動員する事ぁ無いじゃないの。リツコも呆れてたわぁ。」 

アスカ 「ミサト…。なんで言ってくれないのよぉ。」 

ミサト 「だって、アスカ。訊かなかったじゃない?」 ニヤニヤ 

アスカ 「そういう問題じゃないでしょ!アンタって言うのはねぇ!」 

ワ-キャ- ワ-キャ- 



今日も第3新東京市は… 
世界は平和… 




だといいよね。  


つづく




初出:2017.10.03 2ちゃんねる ニュース速報(VIP)
2017.11.01 加筆、修正